東大が「滑り止め」? 合格者7割が入学辞退したPEAKとは

主に外国人留学生を対象とし、授業を英語で行う「教養学部英語コース(PEAK)」と呼ばれるコースで、2014年度合格者のうちの7割近くが東大を蹴って、より魅力のある海外の大学などに進学したとのこと。

image


■PEAKとは何か?
"PEAKは、「Programs in English at Komaba(駒場で行われる英語の授業)」の略。授業が全て英語で受けられるプログラムで、「海外から優秀な学生を集め、英語で教育しよう」という趣旨で2012年10月に開設。初等・中等教育を日本語以外で履修した学生を対象としている。

カリキュラムは、最初の2年間で前期課程の「国際教養コース」を履修したあと、3・4年時の後期課程で「国際日本研究コース」か「国際環境学コース」に進学して、専門的な内容を履修する。「国際日本研究」は東アジアにおける日本を国際的に学ぶもので、「国際環境学」は、環境問題を多面的に研究するものだという。

■増え続ける「合格者数」、入学者は…
PEAKは合格者を増やしている一方で、実際の入学者が減っている。

2012年度の志願者数は238人。38人が合格したが、入学者数は27人と、約3割が入学しなかった。2013年度は199人の志願者があり、49人が合格して23人が入学。2014年度は262人が受験して61人が合格。しかし、入学したのは20人。67.2%が辞退し、イギリスのオックスフォード大やケンブリッジ大、アメリカのマサチューセッツ工科大(MIT)などに進学した。

2012年のPEAKができた当時は、担当の矢口裕人准教授(当時)も「3割辞退は全く悪い数字ではない。合格者のうち7割が入学してくれたのは本当に喜ばしいことだ。期待を感じる」と話していたとされる。アメリカのハーバード大学など世界のトップ校でも入学辞退率3割前後は珍しいことではないとされていたためだった。

住む国で面接
入試には、書類専攻と担当の教員が海外現地まで赴いて面接する方法が採用されている。朝日新聞デジタルによると、2013年度は13人の教員が海外に飛び、79人を面接した。教員がわざわざ海外に赴くのは「受験生に好印象を持ってもらうためでもある」と担当教員は話す。「高い学力と向学心を持つ海外の高校生は、今やお客様」という扱いだ。

これほど力を入れるのは、留学生を獲得したいためだと毎日新聞は解説する。留学生の数を増やせば大学の国際性が評価され、ランキングの点数が上がるのだ。

イギリスの教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」が発表した世界の大学ランキングによると、東大は23位(2014年)。1位のカリフォルニア工科大学(アメリカ)と比較すると、国際観に関する評価が著しく低い状態だ。東アジアトップの座は守ったが、10〜15年前であれば、ランキングから下がることなど考えられなかったと、東大の担当者は話す。

東大大学院を卒業した税理士は、東大について「欧米では一般の人には無名」とツイートした。

魅力的なのか?
世界ランキングで上位に食い込むような大学は、魅力的に移る反面、学費も高いとされる。プレジデントファミリーの2014年1月号によると、アメリカの一流私大に進学した場合の4年間のコストは、2000万〜2400万円ほどだという。

しかし、教育の対価としては適切な価格と見る専門家も多いという。というのも、無料で個人指導を受けることができるチューターという制度や、研究実験のために被験者を集める費用、海外フィールドワークに出る費用まで、大学に申請すれば支給されるからだ。日本の大学以上に授業料減免や、奨学金の制度が充実しているのも魅力だという。

では、PEAKに入学するメリットはないのか。マレーシア出身の学生は、「日本は治安が良く、過ごしやすい国」だということが、PEAKを選んだきっかけの一つだという。大学に関する情報を共有する掲示板サイトでは、「日本の文化に興味がある」「日本と中国の関係に興味がある」とする学生が、PEAKについて相談しているが、「施設は綺麗だ」などのアドバイスがみられる。"