生きた細胞でがんを治す新治療。バイオテック企業の開発競争が熾烈

ジュノ・セラピューティクス社は、T細胞を患者の血中から採取し、がんを標的とするよう遺伝子改変を施してから静脈内に戻す治療を提供している。

"再発により通常の抗がん剤が効きにくい急性リンパ性白血病に用いたところ、90%の患者でがん細胞が消失したのだ。そのような症例が寛解に至る確率は、通常は10%に満たない。

このような成果が追い風となって、ジュノ・セラピューティクスという企業が2014年12月、創設1年4カ月にして新規株式公開(IPO)を果たし、3億400万ドルを調達した。

ジュノ・セラピューティクスはベンチャーキャピタリストやアドバイザーによって創設された企業で、先述のシアトル小児病院のほか、フレッド・ハッチンソンがん研究センターやニューヨーク、メンフィスの病院で開発が進められている実験的なT細胞療法のライセンス権を取得している。

折りしも、バイオテクノロジーや免疫療法の関連株がかつてないほどの活況を呈している絶好のタイミングで、がんの治療法を扱うジュノ・セラピューティクスが実施したIPOは大成功を収めた。バイテク業界では、史上最大級のIPOのひとつに数えられる。

免疫系を利用してがんを攻撃するいくつかの新たなアプローチの中でも、最も画期的なのがT細胞療法だ。アイデアとしては古く、かつては行きづまりとみえた免疫療法が、4年ほど前から驚くべき成果とともに盛り返している。

新たに商業化された「免疫チェックポイント阻害薬」(Immune Checkpoint Inhibitor)は、これまで助かる見込みのなかった、まれな皮膚がんや肺がんの治療に効果を上げている。

メルクとブリストル・マイヤーズ・スクイブから販売されているこの種の薬は、すでに6万人を超える患者の治療に用いられている。

免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞ががんを敵とみなすことを妨げている分子の「ブレーキ」を解除することで作用するもので、免疫系を用いたがんの治療は可能であることを証明する存在だ。

これに対して、T細胞の遺伝子を改変してがんを攻撃させるというジュノ・セラピューティクスのテクノロジーは、まだ初期の実験的な段階にある。IPOを果たした際、同社は、白血病とリンパ腫の患者わずか61人分のデータしか公開していなかった。

ジュノ・セラピューティクスは、アマゾンが本拠を置くワシントン州シアトルのサウス・レイク・ユニオン地区にあり、アマゾンのジェフ・ベゾスCEOは同社の初期投資者だ。"