ポリオ感染拡大、歴史から対策を探る
Susan Brink for National Geographic News
May 12, 2014


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" ポリオは感染すると麻痺(まひ)などを引き起こし、命を奪うこともある。撲滅に向けた取り組みが実を結び始めてから半世紀余りが経った今、再び感染者が増加、国境を越えた感染も確認されている。

 世界保健機関(WHO)は5月5日、パキスタンやシリア、カメルーンなどで感染が拡大しているとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

 ポリオの撲滅は公衆衛生史上、最も成果をあげた取り組みの一つに数えられる。1955年、米国で2万8985人がポリオにかかった。大半が子供だった。同年、ジョナス・ソーク(Jonas Salk)博士がワクチンを開発、1963年には学者アルバート・サビン(Albert Sabin)によって経口ワクチンが作られた。1979年以降、米国内でのポリオ感染は確認されていない。

 1988年から数えると、世界中で25億人を超える子供がワクチンを接種している。その結果、ポリオ感染症例数は世界全体で99%減少した。

 今回は、ジョージア州アトランタのエモリー大学医学部、エモリーワクチンセンターの副主任ウォルター・A・オレンスタイン(Walter A. Orenstein)氏にインタビューを実施。ポリオ感染が再び拡大している原因とその対策について話を聞いた。

◆現在、10カ国でポリオの感染が拡大しています。パキスタンとシリア、カメルーンでは国境を越えた感染も確認されています。どうすればさらなる拡大を食い止められるでしょうか?

 感染の連鎖を断ち切ることです。WHOはポリオ感染が確認された国々に対し、国外に出る人々にワクチンを接種するよう勧めています。ポリオウイルスに感染した人の約72%は無症状ですが、他人に移してしまうことがあります。現在、ポリオが確認されている国はごく少数です。すでにポリオを根絶した国々に再び持ち込まないようにすることが重要です。

◆ポリオの感染経路は?

 唾液中にウイルスがいる場合、咳をしたり、ウイルスが付着した手で誰かを触ったりすれば移る可能性があります。ですが、最も多いのは便を介した感染です。衛生状態が悪ければ、糞口経路でウイルスが広がります。

◆ポリオを封じ込め、根絶するためには何ができますか?

 ワクチン接種が鍵です。米国で最後にポリオが発生したのは1979年ですが、このときはワクチン接種を受けたことのないアーミッシュの間で流行しました。

◆発展途上国では、何がワクチン接種の障壁となっているのでしょうか?

 主に貧困、混乱、戦争です。特に戦争が起きている場合、子供がワクチンを受けられないというのが最大の懸念です。こういった不安定な地域では、医療面での援助を可能にする政治的支援を求める努力が続けられています。

◆ワクチンの効果は本当に一生続きますか?

 麻痺を予防する効果は一生続くようですが、腸管免疫は弱まる可能性があります。そのため、WHOはポリオ発生地域から出る人々に対し、遡って1年以内、遅くても4週間前までにワクチンを接種するよう勧めています。

◆ポリオが先進国に戻ってくる可能性はありますか?

 もちろんありえます。現在ウイルスが確認されている国は限られています。重要なのは、それらの国々での感染を食い止める取り組みに全先進国が協力することです。彼らのためだけでなく、自国のためにもです。ポリオの発生が99%減っただけでは撲滅したことになりません。100%でなくてはいけないのです。 "

PHOTOGRAPH BY KHALED ABDULLAH / REUTERS

ポリオウイルスの撲滅が医学的に困難なのではなく、貧困、混乱、戦争といった社会的な問題でなされていないのは残念なことだ。
はやく撲滅されてほしい。

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