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カテゴリ: 生命科学

アルツハイマー病の原因物質 薬剤投与で人から人に感染か

アルツハイマー病の原因とされる特殊なタンパク質が、30年前まで使われていた薬剤の投与によって、人から人に感染していた可能性があると、イギリスの研究チームが発表し、さらなる研究の必要性を呼びかけている。


"これは、イギリスのロンドン大学などの研究チームがイギリスの科学雑誌ネイチャーに発表しました。

研究チームは、子どもの頃、身長の伸びに問題があったため成長ホルモンの薬剤を投与され、その後脳の組織が破壊される難病、クロイツフェルト・ヤコブ病を発症して死亡した、36歳から51歳の患者8人の脳を調べました。

その結果、患者8人のうち7人で、高齢ではないのに脳内に、アルツハイマー病の原因とされるアミロイド・ベータという特殊なタンパク質の蓄積が確認されたということです。この薬剤は、人間の遺体の脳の細胞から抽出したもので、混入した異常なタンパク質によって、ヤコブ病を発症する報告があったため、30年前に使用が中止になりました。

調べた患者には、比較的若い年齢で、アルツハイマー病を発症するリスクを高める遺伝子の変異がなかったことなどから、研究チームは「子どもの頃に投与されたこの薬剤にアミロイド・ベータの「種」が混入して感染した結果、蓄積が進んだ可能性がある」としています。

調査した研究者は「今回調べた患者は特殊な事例で、アルツハイマー病が人から人に感染することを示したわけでは決してないが、発症のメカニズムをさらに研究する必要がある」と呼びかけています。"

「天才になる遺伝子」についての研究結果


知性はどこからやって来るのか? それを語る際、環境や遺伝を取り上げるのはまったく意味がない。というのも、どちらも一緒になって初めて意味をもつからだ。もし経済的・教育的条件が最適なら、知性の差は大部分がDNAによって決まることもある。しかし、貧しくて学習が困難な環境では、優秀なゲノムも頭角を現すのに苦労する。

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"「通常の知性」と「卓越した知性」の間にどんな違いがあるのかも謎だ。脳の大きさではないことはわかってはいるものの、ゲノムのなかのいったい何が、どういった理由で違いを生むのかは知られていない。

しかしいま、われわれはその答えに近づこうとしている。先日『Molecular Psychiatry』で発表されたキングス・カレッジ・ロンドンの研究のおかげだ。
この研究において研究者たちは「非常に高いIQ」の被験者1,409人のゲノムを分析した。IQ170以上で、世界の人口の0.03パーセントの限られた人間たちだ(ノーベル賞受賞者のIQは平均で「145」といわれている)。

彼ら研究者は、これら非凡な頭脳のゲノムを3,253人の「普通の」人々のゲノムとを比較したのだが、結果としてわかったのは、「天才の遺伝子」が存在しないということだった。

比較のためにゲノム内の「一塩基多型(SNP:Single Nucleotide Polymorphism)」にフォーカスしたが、どんなSNPも、それだけでは、個人間に生じる知性の差の0.16パーセント以上を説明するものではない。また、高度な知性をもつ人は例外的な遺伝子をわずかしかもっていない。ゲノム全体の構成の統計的なわずかな差異でしかないということが、最高のIQをもつ個人とそうではない人のサンプルを比較することでようやく、この遺伝的「サイン」を把握することができた。

同じくキングス・カレッジ・ロンドンのもうひとつの分析は、さらにまだ何かが必要であることをわれわれに教えている。言語、数学、科学、美術など、学校のさまざまな科目における生徒たちのパフォーマンスについて、遺伝と環境とがどれだけの影響を与えるのかを検討したものだ。

結果、「遺伝資産」が関係するのはおおよそ60パーセントだと判明した。つまり、学校での成績について、遺伝の与える影響は大きいということだ。また、さまざまな教科における成功は、ひとつの同じ遺伝子に支配されることもわかった。

これは言い換えると、もし美術にとって「良い」ゲノムを受け継いでいるなら、これは科学や数学にとっても大きな助けとなる、ということだ。当然のことながら、DNAのなかには、個別の教科を度外視して、成功を得ることを可能にするその他の特徴が数多くコード化されている。健康、モチィヴェーション、性格、好奇心、好みなどが関わってくるため「知性」と「成功」は、その人の「人格」と不可分なのだ。

研究の著者たちは、遺伝子と環境の関係が一義的ではないこともわれわれに示唆している。一方では、環境は、生来の特性を最大限に高めたり、抑圧したりすることができる。しかし他方では、論文に書かれているように、「子どもたちは自分たちの経験を、遺伝的傾向をももとにして選択し、変更し、想起する。遺伝 – 環境の相関関係は、受動的ではない。遺伝子は、学習の態度や渇望に影響を与えることにより、子どもたちの選んだ環境にも影響を与える」

例えば、もしある子どもが絵を描く傾向をもって生まれたら、他の子どもたちと比べてより多くの時間を絵を描いたり、芸術作品を眺めて過ごすだろう。これは、脳の発達をさらに変化させるであろう事柄だ。さらに、測定される遺伝性の比率は普遍的なものではなく、有効なのは研究の被験者──イギリスの若者たち──の特定の環境にとってだということも覚えておくとよい。"

健康な人の血液からiPS細胞 京大と日立が作製へ


京都大iPS細胞研究所(CiRA)と日立製作所は7日、健康診断を受けた健康な人から提供してもらった血液を元に、iPS細胞を作る取り組みを始めると発表した。作った細胞は匿名化した健診のデータと一緒に理化学研究所の細胞バンクに寄託し、医学研究に役立てるとのこと。

 "今月中旬にも日立が運営する日立健康管理センタ(茨城県日立市)で募集を始め、様々な年齢から100人程度の提供を目指す。iPS細胞はCiRAが作製し、費用も負担する。

 iPS細胞は無限に増やすことができ、体の様々な組織の細胞に変わる能力がある。CiRAでは、難病患者の細胞から作ったiPS細胞を細胞バンクに寄託し、病因や創薬の研究に使ってもらう環境整備を進めている。今後、健康な人のiPS細胞とその人の健康状態や病歴といった情報が加われば、患者の細胞などと比較が可能になる。(阿部彰芳)"

▼参考
 リプロセルは、慶応義塾大学と疾患型(遺伝子性の心臓病「QT延長症候群」)iPS細胞由来の心筋細胞に関する独占ライセンス契約を締結したと発表した。

 QT延長症候群は、不整脈で突然死につながる可能性のある遺伝性の心臓病で、患者心電図のQTといわれる波形の部分が健康なヒトよりも長いという特徴から「QT延長症候群」と呼ばれてる疾患。今回のライセンス契約は、「QT延長症候群」患者由来のiPS細胞から、病態を再現した慶応大学の先端技術を活用して、リプロセルが今年度内の事業化を目指すというもの。

リプロセルではこれまでに、ヒトiPS細胞由来の心筋細胞「ReproCardio2」を事業化していることから、同技術を取り入れることでさらなる差別化が可能になるほか、「QT延長症候群」の病態解明や新薬開発が大きく促進されるとしている。

人間のワーキングメモリーは一度に四つまでしか処理できないことが判明(米研究)


米研究によって、人間のワーキングメモリーは、一度に四つまでしか処理できないことが明らかになった。

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 "作業記憶とは、情報を一時的に保持し、その処理を行う構造や過程を意味する概念だ。短期記憶と混同されることがあるが、両者は別物である。短期記憶は、素材の操作や統合を行わないため、はるかに多くの情報を保持できる。

 一方、作業記憶は通常は限られた容量しか備えておらず、従来は七つの情報の塊しか保持しておけないと考えられてきた。これは、数字、文字、単語などを単位とするものであるが、何より記憶回路ネットワークが大変である。あろうことか、その容量は四つにまで減ることになった。

 従来の学説では、目からの視覚情報と耳からの聴覚情報は統合され、抽象的思考が発生する前頭葉に到達するとされていた。

 研究チームは機能MRI実験を実施してこの説を検証してみた。その結果、前頭葉にある大きな注意ネットワークは、一方は視覚、他方は聴覚のための二つの交互的な注意ネットワークであることが判明した。

 「視覚系は空間処理については素晴らしいのですが、時間処理についてはそこそこでしかありません。しかし、聴覚系では、時間処理が驚異的であるのに対して、空間処理については特に優れているわけではありません」とソマーズ教授は説明する。

 これは言い換えれば、例えば疾走する救急車など、ある人が空間内の物体を認識しようとしたとき、視覚は聴覚よりも優れているが、時間的間隔を把握しようとしているときは、聴覚が優れているということだ。
 
 だが、視覚的な手がかりなしで騒音の位置を思い出すなど、劣っている方を利用せざるを得ないときはどうなるのだろうか? チームはこの疑問についても取り組んでいる。実験では、被験者に聴覚を使った空間的作業と、視覚を使った時間的作業を行ってもらった。

 この実験からは、二つのネットワークが緊密に連携して、視覚ネットワークが空間内の出来事の認識を、聴覚ネットワークが時間経過的な出来事の認識を助けていることが分かった。

 「ある意味、私たちは空間情報が視覚的なものでなくても空間を見ているわけです。反対に、時間経過的情報が聴覚的なものでなくてもタイミングやリズムを聴いています」とソマーズ博士。こうした連携によって、視覚と聴覚は互いの容量を補強しているようだ。

via:dailymail.・原文翻訳:hiroching"

オキシトシン投与、自閉スペクトラム症に効果

 発達障害の一種で、相手の意図をくみ取ることが苦手な自閉スペクトラム症患者のコミュニケーション障害が、ホルモンの一種「オキシトシン」で改善することが行動や反応で確認されたと、東京大の山末英典准教授(精神医学)らが英科学誌に発表した。効果が実際の対人場面で確かめられたのは初めてとのこと。

 "オキシトシンは脳で分泌され、陣痛や母乳分泌を促す薬として使われている。研究チームは、自閉症の男性患者20人に、オキシトシンと偽薬を1日2回6週間、鼻に噴霧して効果を比べた。患者へのインタビューや、パズルやゲームを共同で行った際の表情や視線、会話などをチェックして点数化し、判定した。その結果、オキシトシンを噴霧した方が、重症度を示す数値が偽薬より約2割低かった。"

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